債務整理の種類

債務整理の種類の種類と各対応方法をご覧ください

払えなくなった債務を整理する方法として、いくつかの手段が存在します。
大きく分けると

  1. 破産
  2. 任意整理
  3. 個人再生

という手続きがあります。
ご相談者様の置かれた状況や、ご意向に合わせて、手続きを選択していくこととなります。

以下、各種手続きについて説明します。

破産

「破産」と聞くと、自分の世界とは全く関係のない、とんでもないことだと思われる方も多いかもしれません。
しかし、若い世代でも簡単に借り入れができるようになった現在では、破産は身近な手続きになりつつあります。
ご相談の中でお聞きする内容も、むしろ誰にでも起こりうると感じられるケースが多いのではないかと思います。
例えば、以下のような内容です。

ケース1

某カードを作ればポイントをもらえると聞いたので作った。一度使ったら便利だと感じ、使う回数が増えていった。使いすぎたときは切り詰めれば何とかなっていた。
そのうち、別のカードを作る機会があり、カードが増え、月々使える金額が大きくなった。  
転居を機に、自動車が必要となり、ローンを組んだ。
その頃から、借り入れをしないと生活が回らなくなっていた。
借入額はあっという間に膨れ上がり、とうとう上限額に達して借り入れができなくなり、先月分を滞納してしまった。
ここでようやく、借り入れがないと生活が回らないことに気づいた。

ケース2

22歳で結婚し、35年ローンで住宅を購入した。
妻も働いていたため、住宅ローンを支払うことに問題苦はなかった。
子供が生まれ、妻が働けなくなり家計収入が下がった。
妻の収入分まで自分が稼ぐしかなかったが、仕事ばかりですれ違いが起き、離婚することとなった。
この負債を抱え、養育費を支払うと、今後の自分の生活が見えない。

上記2例は、よくある債務整理の相談です。
では、弁護士に依頼した場合、どのような流れで手続きが進むのでしょうか。
以下、よくある質問に沿ってご説明します。

よくある質問

ご相談から受任直後

弁護士に依頼した後は、債権者の催促は止まりますか、また、借金を返さなくていいのですか?

弁護士に依頼した場合、まずはすべての債権者に受任通知を送付します。
そこには、破産することになったこと、そして、今後依頼者に対して直接連絡しないようにとの内容を記載します。
その後は、債権者からの督促もストップします。
また、受任後、各債権者への支払いは一切行ってはならなくなります。
   

自動車のローンも支払ってはいけませんか?自動車はすぐにローン会社に持っていかれるのでしょうか?

自動車のローンも債務にあたりますので、支払いは行ってはいけません。
支払うと偏波弁済となり、その後債務が免除されなくなったり、手続きが長引いてしまうことがあります。
受任通知を送った後、債権者からは、だいたい1か月ほどで債権者から自動車の引き上げの連絡が来ます。
ただし、破産手続きとの関係で、自動車を引き渡してはいけないケースが存在します。
(普通車と軽自動車とでルールが異なるため、相談時に車検証や契約書類をお持ちいただくとより見通しがはっきりします。)
弁護士の方でその点を確認する時間が必要となりますので、事案によっては2~3か月の時間を要することがあります。

賃貸物件は退去しないといけないのでしょうか。

通常の賃貸物件であれば、敷金が多額に上るということもありませんので、換価対象にはならず退去する必要はありません。
ただし、賃料の滞納がある場合には、その賃料債務も支払いできなくなりますので、退去を迫られ、退去せざるを得なくなることはあります。
その他、ご自身の居住のためではない賃貸物件については、不要な支出となるため、解約しなければならない可能性もあります。

職場にはバレずに手続きできますか?

破産をするから必ず職場に知られるというものではありません。
ただし、会社から借り入れがある場合には、会社にも受任通知を送ることとなりますので、必然的に知られてしまいます。
また、職業の内容によっては、破産手続きによって制限される場合がありますので、職場に隠して手続きをとることはできません。
詳しくは相談時にお尋ねください。

家族の財産も売却の対象となりますか?

破産の際に換価・配当の対象になるのは、ご本人の財産のみであり、ご家族の財産は売却の対象にはなりません。
ただし、売却を逃れるために、手続き直前に、ご自身の財産を家族に譲渡している場合など、実質的には破産する方の財産と言える場合には、譲渡した財産等も換価の対象となることがあります。

保険は解約しないといけないのでしょうか?

解約返戻金の金額を調査する必要があり、目安としてその金額が20万円以上であれば、原則解約し換価・配当の対象となります。
その他、解約返戻金額が多額に上らなかったり、掛け捨てであったりすれば、解約せずに契約を継続できることもあり。
保険の種類や数、解約返戻金額にもよるところですので、詳しくは相談時にご確認ください。

受任後から破産申立に至るまで

弁護士に依頼した後はどのようなことが必要となりますか?

弁護士が各債権者に受任通知を送った後は、裁判所に提出する申立書の作成に取り掛かります。
申立書には、ご依頼者の方の経歴、家族状況、現在及び過去の仕事の状況、財産状況、債務ができた経緯、支払いが滞るようになった経緯、破産せざるを得なくなった理由等を記入していきます。
また、これらの状況を示すため、戸籍、住民票、資産証明書、課税証明書、源泉徴収票、給与明細書、通帳、保険証券、株券、不動産の全部事項証明書、賃貸借契約書、退職金規定、財産に関する査定書、債権調査票、家計収支表、各種領収書等、実に様々な資料を申立書に添付する必要があります。
これらの書類は、弁護士が取得できるものではなく、ご依頼者の方に集めていただく必要があります。

ギャンブルや浪費があれば破産できないと聞きました。バレずに手続きできますか?

破産に至る理由がギャンブルや高額な出費(飲酒、飲食、投資等)にある場合は、免責不許可事由があるとされ、免責されない可能性が生じます。
免責されないということは、つまり債務が免除されないということです。
これらの支出がごく少額であれば、裁判所に知れずに手続きができるかもしれませんが、上記の通り裁判所には通帳等の財産に関する書類や、債権者からの開示資料をすべて提出するため、隠そうと思って隠せるものではありません。
逆に、隠そうとしたことが裏目に出て、手続きに悪影響を及ぼすことすらあります。
当事務所では多くの破産案件を取り扱っており、過去には、ギャンブルや投資による債務が総額500万円を超えていた案件についても、依頼者の真摯な反省と、現在の生活状況の改善を具体的に裁判所に説明することで、同時廃止事件で終了させた経験が複数あります。
まずはご相談の段階から正直にお話いただくことで、ともに対策を考え、一緒に解決していきたいと思います。

弁護士介入後の収入は、全て裁判所に取り上げられるのでしょうか

弁護士にご依頼いただき、受任通知を送った後は、債権者への返済は一旦中止することになります。
それ以降の収入は、基本的には生活の再建を図るべく、依頼者の方の生活のために使っていただくこととなります。
もちろん、浪費と捉えられるような支出や、高額な品物の購入は問題となりますのでご注意ください。
その他、管財事件となる場合には管財費用(最低20万円~)の積立や、弁護士費用の支払いに充てることもできます。
他方、将来のために貯蓄したいと考える方もおられますが、貯蓄額が多くなることで、配当の対象となってしまったり、同時廃止案件であったものが、破産管財人が選任される管財案件となってしまうこともあります。
このあたりについては、受任後よく打ち合わせをしながら対応させていただきますので、ご安心ください。

余裕ができたため家族にだけは返済を続けていきたいです。可能でしょうか。

破産する場合には、基本的には全ての債権者を平等に扱う必要があります。
家族であっても同じであり、返済は許可されません。
手続きに悪影響を与える可能性がありますので、勝手に返済は行わず、まずはご依頼されている弁護士によく相談されるようにしてください。

依頼して数か月が経ちますが、今になって他にも債務があることを思い出しました。

注意点として、手続きに加えていない債権者については、たとえ破産できたとしても、破産したことを理由に支払いを拒めないことがあります。
そのため、全ての債権者を手続きに加える必要があります。
途中からであっても、随時手続きに加えることは可能です。
ただし、その時期が遅ければ遅いほど、手続きが長くなることもありますし、また、時期によっては最悪、手続きに加えられなくなる可能性があります。
判明次第、すぐに担当弁護士までお伝えすることをお勧めいたします。

お給料が差し押さえられてしまいました。破産すれば何とかなりますか?

破産手続きの開始決定が出ることで、給与の差し押さえが止まります。
しかし、弁護士が受任するだけでは止まりません。
また、開始決定が出ても、それまで通り全額が支給されるわけではなく、手続終了後に戻ってくる形となります。
そのため、一度給与が差し押さえられてしまうと、給与の一部で生活しなければならない状況がしばらく続いてしまいます。
一番良いのは、差し押さえられる前に手続きを進めることですので、できる限り早めにご相談いただくことが何より重要となります。

破産手続終了後

無事破産ができましたが、注意しておくことはありますでしょうか。

破産した後、5年から10年間は信用情報に傷がついた状態となり、借り入れが困難となります。
そのため、闇金等から連絡が来た場合に、つい借りてしまうことがあります。
そのような会社は、悪質な契約も多くあり、家族や職場等の情報をあらかじめ聞き出しておき、法外な利息の支払いに応じない場合には関係者にも連絡を入れられ、生活全体に影響を及ぼしてしまいます。
警察も、民事だからとほとんど対応してくれません。
そのため、もう一度破産したいと相談に来られる方もいます。
しかし、破産手続から7年間は原則として再度の破産は行えません。
二度目はない、という気持ちで、何とか借り入れをせずに生活するよう心がけてください。

破産後、相続で大きな収入がありました。問題ないでしょうか。

破産手続開始決定後の収入は、債権者への配当に回す必要はありませんので、問題ありません。
ただ、以前から相続自体は生じており、破産手続終了後に遺産分割協議が終了してお金が入ってきました、というように収入の原因が破産手続開始決定前にある場合には問題が生じ得ます。
事前に特別な収入があることを予測している場合には、弁護士にその情報を伝えるようにしてください。

以上のとおり、破産は裁判所を通す手続きとなりますので、法律に従って厳格に進める必要があります。

任意整理

任意整理を選択することのメリット

3~5年の返済、将来の利息のカットも可能

リボ払いのように、決まった金額を支払う場合、借入額が大きくなればなるほど、利息に充てられる金額が大きくなり、元金が減りません。
そのような状況を改善したいと考え、相談に来られる方は非常に多くおられます。
任意整理とは、債権者との間で債務の返済方法について協議を行い、今後の支払い方法について和解を行う手続きです。
破産のように裁判所での手続きではなく、あくまで債権者との任意のお話合いになります。
しかし、債権者としても破産されるよりは少しでも債権を回収できる方が望ましいため、債権者によっては元金のみを支払えば利息や遅延損害金は免除するとの内容で合意に至る場合もありますし、将来発生する利息は免除するとの内容で合意に至る場合もあります。
ご依頼者の方としては、これまで終わりが見えなかった債務の支払いが、任意整理をすることで確実に終わりが見えるようになります。
任意整理は、3年から5年、36回から60回の間での返済計画で和解に至ることが一般的となります。

すべての債権者を対象とする必要はない

銀行や信用金庫、親族など、債権者によっては60回以上の分割回数にしてくれていたり、また利息も低かったりなど、ご依頼者様の生活をさほど圧迫していない債権や、任意整理することで逆に返済額が増額してしまうのではないかと思われる債権もあります。
また、数社のみの返済額が異様に高額な場合には、任意整理を行うことで、生活状況が随分と改善されるケースも存在します。
このような場合は、全ての債権者と任意整理をする必要はなく、メリットのある債権者のみと交渉を行い、月々の返済額を下げることが可能となります。
任意整理は破産と異なり、裁判所を通さない手続きですので、このように融通を利かしやすい点がメリットとなります。

手続き後も借り入れができる

任意整理の場合、破産の場合のようにすべての債権者を対象とする必要はありません。
つまりは、整理の対象としない債権者からの借り入れはその後も継続することが可能となります。
(なお、任意整理の場合も、信用情報には事故情報として登録されるため、新たなカードのお申し込み等は困難となります。また、既存のカード等についても再審査が行われ使えなくなる可能性はあります。)
このような場合、今後も何かあった場合には、借り入れで凌ぐことができるという安心感がありますので、破産に比してメリットと考えられます。

個人再生

個人再生手続きとは、破産と任意整理の中間のような手続きです。

破産と似ている点

  • 現在保有している資産額は債権者に返済しなければならない
  • 裁判所を通す手続きである
  • すべての債権者を対象としなければならない

任意整理と似ている点

  • 債務の一部を原則3年~5年の分割で返済する
  • 不動産等の資産を残すことができる

個人再生の手続きは、払うことが困難となってしまった債務について、裁判所を通して、債務額の一部を支払うことで、残りの債務を免除してもらえるという制度です。
ただし、破産のように財産をお金に換え、債権者への配当に充てる手続きではなく、収入の中から毎月一定額を債権者に返済していくというものになります。
個人再生が選ばれるメリットは、以下の通りです。

ギャンブルで多くの債務を作ってしまったが、支払いができない

破産では、浪費やギャンブル等がある場合免責不許可事由があるとして審査が厳しくなり、場合によっては免責(債務の免除)を受けられません。
他方、個人再生手続きではそのような制限がありません。
そのため、ギャンブルや投資、浪費などで債務を作ってしまった方の場合は個人再生手続きを選択することがあります。

債務の支払いは困難だが、住宅ローン付きの物件を保有しており、住宅は維持したい

破産では、原則として、不動産はお金に換えて配当することとなります。
また、一部の債権者だけ優遇することはできないため、住宅ローンだけ支払っていくということはできません。
他方、個人再生手続きでは、住宅ローン特例が存在します。
この特例を利用できるケースでは、住宅ローンについては従前と変わらず支払いを続けることができるため、住宅を失うことなく債務整理の手続きを行うことができます。

このように魅力的な面がある個人再生手続きですが、手続内では、毎月返済を行っていけるような収入があるかどうか、返済総額を算出するにあたって資産価値はどの程度かなど、裁判所の厳しい審査が行われます。
そのため、単に住宅を残したい、免責不許可事由があるが債務整理がしたいからと簡単に利用できる手続きではありません。
当事務所では、相談者様の資産状況、収入状況、生活状況を詳細に確認させていただき、個人再生手続きの利用が可能かどうかをアドバイスさせていただきます。
弁護士法人山本・坪井綜合法律事務所福岡オフィスでは、どのような手続きを選択すべきかをご相談者様と一緒に考え、ご相談者にとって最も良い方法を選択していきます